V2Hってなに?|仕組みとメリットを解説
V2H(Vehicle to Home)は、電気自動車(EV)あるいはプラグインハイブリッド車(PHEV)に搭載されたバッテリーを家庭の電源として利用する技術を指します。近年、再生可能エネルギーの普及やEVシフト、災害に対するレジリエンス向上が求められる中で、家庭のエネルギーマネジメントにおける新たな選択肢として注目されています。従来、家庭のバックアップ電源としては蓄電池が主流でした。しかし、EVに搭載されるバッテリー容量は一般家庭用蓄電池の 5~10倍 にもおよび、より長時間の電力供給が可能となります。こうした「家庭用蓄電池を大きく上回る電力容量」と「移動可能な電源」という特性がV2H普及の大きな原動力となっています。
V2Hの構成要素とシステム
・ EV/PHEVバッテリー
EVのバッテリーは一般的に40〜80kWh、最新モデルでは100kWh近い容量を持つものもあります。家庭が1日に使用する電力量は平均10kWh前後であるため、EV1台で2~6日程度の電力供給が可能です。また、EVバッテリーは急速充電に対応しており、非常時でも短時間で大きな電力を家に送り出せる点が、固定蓄電池にはないメリットといえます。
・ V2H充放電器(パワーコンディショナ、V2Hインバータ)
V2Hシステムの中核となる装置で、役割は以下の通りです。
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直流(DC)↔ 交流(AC)の変換:蓄電池や太陽光発電の電気は直流(DC)のため、交流(AC)に変換する必要があります。
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EVと家の間の電力制御
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系統連携制御(電力会社との同期運転)
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保護機能(逆潮流防止、漏電ブレーカ、過電流保護)
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設備ごとのモード切替(充電/放電/自立運転)
V2H装置が持つ最も重要な機能は「系統連携制御」と「自立運転切替」です。平時では太陽光発電の電気、EVバッテリーの電気を最適に運用しながら電気代削減につなげる一方、停電が発生した際には自動的にEVから家へ電力供給が行われるよう制御され、電力会社の系統側へ電気が逆流しないように安全システムが働きます。
・家庭側分電盤(V2H専用回路)
家庭でEVの電力を使用するには、V2Hからの出力を受けるための専用分電盤が必要です。近年は災害時の利便性と大容量の蓄電池の特性をいかして、一部の電源のみ使用できる特定負荷型ではなく、家中の電気を平時と変わらず利用できる全負荷型の需要が一般的しています。
V2Hの運転モードと制御技術
V2Hは複数の運転モードを持ち、電力需給状況に応じて制御が行われます。
・通常運転モード(系統連携)
家庭の消費電力を優先的に太陽光(PV)、次いでV2Hから供給し、不足分を電力会社から購入するモードです。
余剰電力はEVへ充電されます。
・充電モード
夜間の安い電力(時間帯別料金)や余剰太陽光を利用してEVに蓄電します。最近ではHEMSと連携し、以下を自動で最適化するシステムも増えています。
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電気料金の安い時間帯
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天気予報に基づいた太陽光発電量の予測
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家庭の消費パターン
・放電モード(ピークシフト)
電気料金が高い時間帯はEVから家へ電力供給し、系統からの購入を減らします。これにより家庭の電気代が大幅に削減可能です。
・自立運転(停電時バックアップ)
停電時にはV2Hが自動的に自立モードへ切り替わり、EVからの電力だけで家庭へ給電されます。一日で使用する電力量の目安は8~10WhのたええEVが60kWhであれば 約6日程度の生活電力を確保できます。
V2Hの導入メリット
・災害時の電源確保
日本は地震・台風・大雨災害が多く、停電リスクは非常に高い国です。一般的な固定蓄電池(6〜12kWh)では2日程度しか保たないのに対し、EVは5〜10倍の容量を持ち、長期間の停電に対応可能です。特に全負荷型V2Hでは、通常の家庭機器をそのまま使えるため、冷暖房の維持や医療機器の使用など、生活の質が大きく改善します。
・電気代削減(ピークシフト)
深夜に安い電気でEVを充電して、昼間の高い電気料金の時に放電して家をまかなうことができます。これにより、年間電気料金を 20〜40% 節約できるケースもあります。
・太陽光発電との相性が抜群
V2Hの真価は太陽光(PV)との組み合わせで発揮されます。現在、余剰電力を電力会社に買い取る買取価格(FIT)が従来より低いため、売電するより自己消費の方がが経済的に有利です。
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昼:PVの余剰電力をEVへ充電 → 売電収入よりも自家消費効果が大きい
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夜:EVから家へ放電 → 自家消費率最大化
・大容量蓄電池を買わなくてよい
家庭用蓄電池は10kWhクラスで100〜150万円が相場ですが、EVはすでに大容量バッテリーを搭載しています。V2Hを導入すれば、 「車」が大容量蓄電池の役割を兼ねる ため、蓄電池導入コストを削減できます。
V2Hの課題・デメリットと技術的留意点
・初期コスト
V2H装置自体は150万円位ですが、EVがあることが前提のため、初期費用は家庭用蓄電池と比べて高額になります。
・対応車種の制限
全てのEVがV2Hに対応しているわけではありません。所有するEVが対応しているか確認する必要があります。
・ 家屋側の電気容量・分電盤の制限
古い住宅では分電盤の容量が不足していることがあり、V2Hを設置できない場合があります。特に全負荷型の場合は100A契約が推奨されます。
・車のバッテリー劣化
「放電するとバッテリーが劣化するのでは?」という懸念がありますが、実際には以下の理由で影響は軽微です。
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EVバッテリーの劣化原因の主因は「高温」と「満充電長時間保持」
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通常の家庭への放電サイクルは劣化要因が小さい
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多くのメーカーはV2H使用を想定して保証を設計している
具体的な使用シナリオ分析
太陽光+V2H+EVの最適運用例
- 日中:太陽光で家の消費をまかないつつ余剰をEVへ充電する。売電より自家消費の方が経済メリットが高いと言えます。
- 夕方〜夜間:家の消費をEVから供給。電力会社から買う高価格電力を減らして光熱費の削減を図ります。
- 深夜:EVのバッテリー残量を確認し必要なら充電しながら、時間帯別料金プランで安い深夜電力を使う工夫。
災害発生時の想定シナリオ
- 停電発生(自動切替):V2Hが瞬時に「自立運転モード」に移行するため、家全体の電力がEVから供給される
- 停電が長期化した場合:不急の家電を止めて消費を最適化し、EVのバッテリー容量を確認しながら運用する。走行可能な場合は、近隣の急速充電スタンドで補給ができるため、電源補給を受けに行ける点が家庭用蓄電池に対する最大の優位性です。
【不二建設で取り扱い実績のあるV2H製造メーカー】
ニチコン EVパワーステーション
Panasonic V2H蓄電システム
V2Hが今後普及する理由を考察
・EV普及によるバッテリー容量の増加
EVが普及するほど、各家庭に「大容量蓄電池」が自然に配置されることになるため、V2Hの価値は今後さらに高まります。
・電力逼迫・災害対策
政府は分散型エネルギー資源(DER)としてEV活用を推進しています。。自治体レベルでもV2H対応EVを非常用車両として導入する例が増えています。
・V2G(Vehicle to Grid)への発展
V2Hの次のステップとして、EVの電力を電力網へ戻す「V2G」が注目されています。電力の需給バランスをEV群で調整する仕組みで、将来的にEVが社会全体のバッファとして機能する可能性があります。
まとめ
V2Hは、これからの家庭エネルギーの中心になりえると考えることも出来るでしょう。現在の住まいは、電気やガスなどのエネルギー消費を前提に暮らしを支えています。そのため、太陽光発電など再生可能エネルギーの活用だけでなく、大容量のEVバッテリーを活用できるV2Hの導入は今後ますます注目されると予想されます。蓄電池は国や自治体でも導入を促すため、補助金も活用できるケースもあります。建築会社の担当者に確認すると良いでしょう。
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