2027年ZEH基準が改正?|現行基準との違いを解説

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2027年度から施行されるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準の改正は、住宅業界にとって極めて重要な転換点となります。これは単なる技術基準の変更に留まらず、2050年カーボンニュートラル実現に向けた国家戦略「GX(グリーントランスフォーメーション)」の一環として位置づけられています 。政府は、遅くとも2030年度までに新築住宅の省エネルギー基準をZEH水準に引き上げる目標を掲げており 、今回の改正は、その目標達成に向けた重要な布石となります。これにより、住宅の環境性能と資産価値に大きな影響が及ぶことが予想されます。 2027年からの新ZEH(GX ZEHシリーズ)基準の主要な変更点を詳細に解説します。両基準を比較することで、住宅事業者や消費者が直面するであろう影響と、今後の展望について考察します。

 

現行ZEH基準の概要

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ZEHとは、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギー等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」と定義されています 。その実現には「高断熱」「省エネ」「創エネ」の3つの要素が柱となります  

 

現行の主要な性能基準は以下の通りです。

  • 断熱性能(外皮性能): 地域区分に応じてUA値0.4~0.6以下を基準とし 、「断熱等性能等級5」に相当する水準が求められます 。具体的には、地域1・2では0.4以下、地域3では0.5以下、地域4~7では0.6以下が目安です  
  • 省エネ性能(一次エネルギー消費量削減率): 再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の削減を達成することが求められます 。なおZEH+では、再生可能エネルギーを除き25%以上の削減が必要です  
  • 創エネ性能: 再生可能エネルギー(主に太陽光発電システム)を導入し、年間の一次エネルギー消費量を100%以上削減(実質ゼロ)を目指します
 

現行ZEHにはZEH支援事業として、ZEH水準住宅で55万円、ZEH+で90万円などの補助金が設定されています(2025年時点) 。また、子育てグリーン住宅支援事業では、ZEH水準住宅で40万円(建替えの場合は60万円)の補助金が適用されます 。さらに、住宅ローン控除や贈与税などの税制優遇措置も適用されます 。


参考:資源エネルギー庁:省エネ住宅

2027年ZEH基準改正の主要変更点※

2027年度からは、新たなZEH基準が導入されます 。これは、政府が推進する「GX(グリーントランスフォーメーション)」の実現に向けて2025年に新設された「GX志向型住宅」と同等の水準となる見込みです 。ZEHは単なる環境配慮型住宅の選択肢ではなく、将来的に全ての新築住宅に求められる「当たり前の基準」となることが強調されます 。これは、フラット35の金利優遇策など住宅市場全体に波及効果をもたらす可能性が高いと考えられます。新EHは、単にエネルギー効率が良いだけでなく、「国の脱炭素目標に貢献する住宅」としての中古市場での資産価値維持・向上にも寄与するでしょう
※2025年5月12日の第48回省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会でZEHの定義の見直し案

 

主要な変更点は以下の通りです。

  • 断熱性能(外皮性能)の強化:現行の「断熱等性能等級5」から、原則として「断熱等性能等級6」の必須化に引き上げられます 。UA値の基準も大幅に厳格化され 、例えば地域6(東京、名古屋、大阪など)では、現行のUA値0.6以下から0.46以下へと強化されます 。その他の地域では、地域1~3で0.28以下、地域4で0.34以下、地域5~7で0.46以下が求められます 。 
  • 省エネ性能(一次エネルギー消費量削減率)の引き上げ:再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量削減率が、現行の20%(ZEH)/25%(ZEH+)から、一律35%以上に引き上げられます 。これはGX志向型住宅と同水準です
  • 創エネ性能(ZEH+): ZEH+では、再生可能エネルギーを含めた一次エネルギー消費量削減率が、現行の100%以上から115%以上を目指すことになります
  • 必須設備の追加:高度エネマネ(HEMS)、蓄電池(5kw以上)の導入が必須化されます※。

※太陽光発電を設置しない場合のみ

 

    新ZEHの断熱性能(UA値)や省エネ率が「GX志向型住宅」と同水準になるという事実は 、日本の住宅省エネ基準が段階的に引き上げられ、GX志向型住宅が示す高い基準にしていくことを示唆しています。GX志向型住宅は、現行ZEHよりも厳しい基準と高い補助金が設定されており、先行してより高性能な住宅の普及を促す役割を担うことを目的にしていますが、 新ZEHがこの水準に追いつくことで、ZEH自体が「高性能住宅」の最低ラインとして再定義されることになります。これは、住宅業界にとって、GX志向型住宅の技術やノウハウが、今後のZEH建築における標準的なものとなることを意味します。

     

    新しいZEH基準では、以下の分類が導入されます。

    • 新ZEH+: 年間の一次エネルギー消費量を負にする(削減率115%以上)。
    • 新ZEH: 年間の一次エネルギー消費量をゼロ以下にする(削減率100%以上115%未満)。
    • Nearly 新ZEH: 年間の一次エネルギー消費量をゼロに近づける(削減率75%以上100%未満)。
    • 新ZEH Oriented: 高断熱・高効率省エネ設備を備え、GX ZEHを目指す住宅。多雪地域や都市部狭小地(敷地面積85㎡未満)に限定されます  

    断熱等級の引き上げ(等級5から6へ)と一次エネルギー消費量削減率の大幅な強化(20%から35%へ)は、住宅の高断熱化と省エネ化を推進していくことを改めて強調しています 。同時に、高度エネマネ、蓄電池の必須化は、単にエネルギーを「創る」だけでなく、「賢く管理し、貯める」ことの重要性が増していることを意味します 。特に、蓄電池の必須化は、太陽光発電システムとの連携、非常時の電力供給源としての役割、そして将来的にはV2H(車載電池活用)システムとの連携した「スマートハウス」化への明確な方向性を示しています。

    資源エネルギー庁:家庭でできる省エネ

    不二建設コラム:GX志向型住宅について解説

    現行基準と新基準の比較

    ZEH基準の主要な変更点を以下の表にまとめました。数値の変化を明確に提示することで、新基準の厳格化の度合いを直感的に理解し、今後の対応の必要性を強く認識することができます。

    項目 現行ZEH 現行ZEH+ 2027年 新ZEH 2027年 新ZEH+
    断熱性能(等級) 等級5以上 等級5以上 等級6以上 等級6以上
    断熱性能(UA値:地域5,6の例) 0.6 W/㎡・K 以下   0.6 W/㎡・K 以下   0.46 W/㎡・K 以下    0.46 W/㎡・K 以下   
    一次エネルギー消費量削減率(再エネ除く) 20%以上    25%以上    35%以上    35%以上   
    一次エネルギー消費量削減率(再エネ含む) 100%以上 100%以上 100%以上 115%以上
    設備要件 なし(高効率設備は省エネ達成のため導入) なし(高効率設備は省エネ達成のため導入) HEMS、蓄電池(5kWh以上) HEMS、蓄電池(5kWh以上)、その他2つ以上の補助設備 
    対象地域/条件

    一般地域(寒冷地、低日射地域はNearly ZEH)  

    一般地域    一般地域(多雪地域、都市部狭小地はZEH Oriented)    一般地域   
    補助金(参考:2025年度) 55万円(ZEH支援事業)
    40万円(子育てグリーン)
      
    90万円(ZEH支援事業)    未定 未定

    2025年に全ての新築住宅に省エネ基準(等級4相当)が義務化されました。さらに2030年には新築住宅の省エネ基準が、ZEH水準に引き上げられるという目標があります 。今回の2027年ZEH基準改正は、この2030年目標達成に向けた「中間目標」であり、市場全体をZEH水準へと強制的に引き上げる政策的な意図が読み取れます。これは、これまでZEHを特別な選択肢として提供してきた住宅事業者に対し、ZEHが「当たり前の基準」となる未来への適応を強く迫るものといえます。省エネ基準の義務化とZEH基準の引き上げは、住宅の初期コスト上昇圧力となるものの、長期的な光熱費削減や資産価値維持のメリットを消費者にいかに訴求するかが重要になります。参照:家選びの基準変わります(国交省)環境共創イニシアチブ:ZEH補助金

    住宅業界への影響と今後の展望

    今回の2027年改正は、「遅くとも2030年度までに、新築住宅の省エネ基準をZEH水準に引き上げる」という政府目標 達成に向けた重要な通過点です。ZEHは、住宅のトップランナー基準として、全体の省エネ性能を牽引する役割を担います  

    設計・施工における対応の必要性

    断熱等級6への引き上げは、断熱材の厚み確保、窓の高性能化(トリプルガラス等)、気密性の確保など、設計・施工においてより高い技術力と専門知識が不可欠となります 。さらにHEMSや蓄電池の必須化により導入コストの増加に直結します 。特に蓄電池はまだまだ高価な設備ですが、一方で大手ハウスメーカーを中心に太陽光+蓄電池の導入が積極的に進んでおり、新ZEH基準におけるHEMSと蓄電池の必須化は既定路線だと考えられます。さらにこれは、住宅産業が「脱炭素化」だけでなく、「デジタル化」の波にも乗ることを強制される動きです。エネルギーデータの収集・分析、遠隔制御、AI・IoT連携 といった技術が、住宅の設計・運用に不可欠となるでしょう。

    補助金制度の動向

    住宅省エネ2025年キャンペーン「子育てグリーン住宅支援事業」において、GX志向型住宅の補助金(160万円)がZEH水準(40万円)よりも高額である現状は、政府がより高い水準の住宅を奨励していることを示唆しています。また、2025年は家庭用蓄電池に対して補助する制度がすでに開始されており、GX志向型住宅との併用も可能。これらをふまえると、新ZEH導入後はこれまでのZEH水準ではなく新ZEHに対する補助金や税制優遇による後押しが続く可能性があります。

    子育てグリーン住宅支援事業【公式】
    DR家庭用蓄電池事業【公式】

     

    市場競争と差別化

    現在のZEH水準が「当たり前」になる中で、住宅会社はいかにコストを抑えつつ、品質と性能を両立させるか、また、ZEH+やGX志向型住宅といったさらに高みを目指すことで、市場での差別化を図る戦略が求められます。HEMSや蓄電池、EV充電設備(V2H)の導入は、住宅のスマート化、レジリエンス(災害対応力)向上といった付加価値提供の機会となるでしょう

    消費者への影響

    初期コストは上昇するものの、長期的な光熱費削減、快適性の向上、災害時の電力確保、将来的な資産価値の維持・向上といったメリットを享受できます 。住宅購入時には、エネルギー性能が重要な選択基準となるため、事業者にはより明確な情報提供と説明責任が求められます。  

    2030年目標(新築住宅のZEH水準義務化)と2027年からのZEH基準強化は、住宅の「環境性能」が、立地や広さといった従来の要素に加えて、資産価値を決定する上で極めて重要な要素となることを示唆しています。省エネ性能が低い住宅は、将来的に光熱費の高騰リスクや、売却・賃貸時の評価下落リスクを抱える可能性があります。また、中古住宅市場においても、新ZEH基準を満たす住宅は「高付加価値物件」として評価され、そうでない住宅との間で価格差が拡大する可能性があります。

    まとめ

    2027年のZEH基準改正は、日本の住宅のエネルギー性能を飛躍的に向上させるための、不可避かつ重要な一歩です。新ZEHへの移行は、単なる省エネ住宅から、国の脱炭素目標に貢献する「グリーンな未来志向型住宅」への進化を意味します。住宅業界は、高断熱化技術の習得、HEMS・蓄電池導入への対応そして新たなビジネスモデルの構築を通じて、この変革期を乗り越える必要があります。消費者にとっては初期投資は増えるものの、長期的な経済性や快適性、そして環境貢献という多角的なメリットを享受できる住宅です。今回の改正は、2030年目標、ひいては2050年カーボンニュートラル実現に向けた、持続可能な住宅社会の構築に向けた強力な推進力となるでしょう。

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    定休日:水・木
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    所在地:茨城県守谷市本町241-1総合住宅展示場 守谷住宅公園内
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    連絡先:029-879-8333
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    監修者情報

    吉田基生

    吉田基生二級建築士 宅地建物取引士 測量士捕

    卒業後に某ハウスメーカーに入社。住宅営業、住宅FC部門のOFCを経験する。1999年に地元の不二建設に入社。営業、設計担当としてお客様の家づくりに携わる一方、企画住宅の開発やホームページの管理運営、宣伝広告などの業務を行う企画開発部の部門をつとめる。