農地を宅地に転用するために知っておくべき制度・基準・手続きとは?|茨城県の農地転用申請に必要な費用や期間
茨城県の郊外で農地だった土地を購入して家を建てる場合や祖父母・両親が持っていた畑に新築を建てる場合には、農地を転用して「宅地」に変える手続きが必要になります。
農地転用は、その地域や土地によって手続きも異なり、場合によっては手続きが認められないケースもあるのです。
今回は、茨城で農地転用も視野に入れて家づくりをお考えの方に、立地条件や手続き、申請期間、費用などに関する情報をご紹介します。ぜひ、土地選びや予算計画、将来の新築づくりの参考にしてみてください。
- 農地転用とは?宅地との違いを知ろう
- 茨城県の農地転用許可制度を確認してみよう
- 茨城県の農地転用許可基準の内容とは?
- 必要書類や届出・申請期間を把握しよう
- 手続き期間や費用についても余裕が必要
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1.農地転用とは?宅地として利用できる制度がある
農地転用とは、以前「農地」として使われていた土地を住宅や店舗、駐車場、道路といった異なる用途に使う土地に変更することです。
本来、農地には食糧生産を目的とした農業を守るための農地法によって、農地の所有権や権利の移動、農業以外の目的で使う土地への転用などに制限がかかっています。そのため、農地ではない用途で使う土地として利用するには、都道府県知事や指定市町村などの農業委員会に「農地転用」の許可・届出を出す必要があるのです。
農地転用が認められないケースや所有権の関係、手続きの期間など、事前に条件や情報を得ておくことが大切です。
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2.農地転用の要件とは?2つの許可基準
農地転用の許可要件には、土地の区分に応じた立地基準と一般基準があります。
①立地基準~農地区分・許可方針【茨城編】
「農地を営農条件及び市街化の状況から見て、次の5種類に区分し、優良な農地での転用を厳しく制限し、農業生産への影響が少ない第3種農地等への転用を誘導することとしています。 一般基準(立地基準以外の基準(すべての農地区分で共通))」
農地区分 | 営農条件・市街化の状況 | 許可の方針 |
農用地区域内農地 | 市町村が定める農業振興地域整備計画において、農用地区域とされた区域内の農地 | 原則不許可(農振法第10条第3項の農用地利用計画において、指定された用途の場合などに許可) |
甲種農地 | 第1種農地の条件を満たす農地であり、市街化調整区域内の土地改良事業などの対象となった農地(8年以内)など特に良好な営農条件を備えている農地 | 原則不許可(土地収用法第26条の告示にかかる事業の場合などに許可) |
第1種農地 | 10ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業などの対象となった農地など良好な営農条件を備えている農地 | 原則不許可(土地収用法対象事業の用に供する場合などに許可) |
第2種農地 | 鉄道の駅が500m以内にあるなど市街化が見込まれる農地または生産性の低い小集団の農地 | 周辺の他の土地に立地することができないと認められる場合などは許可 |
第3種農地 | 鉄道の駅が300m以内にあるなどの市街地の区域または市街化の傾向が著しい区域にある農地 | 原則許可 |
②一般基準~全ての農地区分・共通基準【茨城編】
「許可申請の内容について、申請目的実現の確実性(土地の造成だけを行う転用は、市町村が行うもの等を除き不許可)、被害防除措置等について審査し、適当と認められない場合は、許可できないこととなっています。」
権限移譲市町村や制度の概要は、以下の茨城県ホームページ「農地転用許可制度」をご確認ください。
引用・出典【茨城県ホームページ】:農地転用許可制度
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3.農地転用に必要な手続きや期間について【茨城】
①農地転用申請の流れ
農地転用の申請者は、申請書を市町村の農業委員会に提出します。
a. 転用する農地面積が4haを超える場合
①申請人が、農業委員会に許可申請を出す
②農業委員会が、農業委員会ネットワーク機構(原則30a超えの場合のみ)に諮問、答申を受ける
③農業委員会が、②の内容を指定市町村長・県(農業政策課)に送付する
④指定市町村長・県(農業政策課)が、関東農政局に協議、回答を受ける
⑤指定市町村長・県(農業政策課)が、申請人に許可を通知する
b. 転用する農地面積が4ha以下の場合
■ 1:県知事または指定市町村長処分の場合
①申請人が、農業委員会に許可申請を出す
②農業委員会が、農業委員会ネットワーク機構(原則30a超えの場合のみ)に諮問、答申を受ける
③農業委員会が、②の内容を指定市町村長・県(農業政策課)に送付する
④指定市町村長・県(農業政策課)が、申請人に許可を通知する
転用する農地面積が4ha以下の場合は、「関東農政局」による協議・回答が不要になります。
■ 2:権限移譲市町村処分の場合(農業委員会に事務委任を行っている場合)
①申請人が、農業委員会に許可申請を出す
②農業委員会が、農業委員会ネットワーク機構(原則30a超えの場合のみ)に諮問、答申を受ける
③農業委員会が、申請人に許可を通知する
農業委員会に事務委任を行っている場合は、「指定市町村長・県(農業政策課)」への届出が不要になります。
②農地法に基づく手続き
農地転用は、農地法の中でも特に第3・4・5条が重要になります。
第3条は、農地の売買や賃貸など、使用権に関する条項で農地を売買したり、使用権を移転、または設定する場合には、政令の定めに従って市町村の農業委員会に許可を得る必要があるというものです。
第4・5条は「農地転用」に関する条項です
第4条は、農地所有者等が、農地を農地以外のものにする場合、政令の定めに従い都道府県知事の許可を得る必要があるというものです。農地所有者が、自分の住まいを建てるために、農地転用申請をして宅地にする場合がこれに当たります。
第5条は、農地所有者と転用者(売主と買主・貸主と借主)が、農地の売買や賃貸などの使用権を移転、または設定する場合には、政令の定めに従って都道府県知事の許可を得る必要があるというものです。農地転用をした上で宅地として売買したり、賃貸で建物を建てる場合など所有権や利用権の移転がともなうケースがこれに当たります。
③必要書類や申請期間は?
a. 農地転用に関する必要書類は?
農地転用許可申請を行うにあたり、以下の添付書類が必要になります。
■法人にあっては、定款(寄付行為)及び法人の登記事項証明書
■申請に係る土地の登記事項証明書
■申請に係る土地の地番を表示する図面
■転用候補地の位置及び附近の状況を示す図面(縮尺50,000分1~10,000分の1程度)
■転用候補地に建設しようとする建物または施設の面積、位置および施設間の距離を表示する図面(縮尺500分1~2,000分の1程度)
■転用事業を実施するために必要な資力及び信用があることを証する書面
■所有権以外の権原に基づく申請の場合には、所有者の同意書
■耕作者がいるときは、耕作者の同意書
■転用に関連して他法令の許認可等を了している場合には、その旨を証する書面
■申請に係る農地が土地改良区の地区内にある場合には、当該土地改良区の意見書
■転用事業に関連して取水または排水につき、水利権者、漁業権者その他関係権利者の同意を得ている場合には、その旨を証する書面
■その他参考となるべき書類
引用【茨城県ホームページ】:農地転用許可制度
b. 申請期間は?
農地転用の申請書を提出してから許可が出るまでの期間は、一般的に1か月半~2か月が目安とされています。しかも、農業委員会が申請書を受け付けるのは月に1回の決まった日のみ。その日に申請できないと翌月の受付日まで待たなくてはいけないため、申請日は事前に知っておくと良いです。
また、許可が下りるまでに複雑な手続きが必要な場合や地域によっては、1年以上かかることもあります。
家を建てたいのになかなか申請が下りず、その土地を諦めてしまう方も少なくありません。農地転用の手続きを円滑に進めるためには、農業委員会や行政書士、工務店などへの事前相談でしっかりと準備・見通しを立てておくことが大切です。
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4.農地転用にかかる費用【茨城】
①申請時にかかる費用(手続き・決済金・行政書士、土地家屋調査士)
a. 農地転用手続き費用
対象となる土地が市街化区域の場合は、「届出」と手続き費用の約2万円~。市街化調整区域の場合は、「許可」と手続き費用の約10万円~が必要です。
b. 土地改良区域除外決済金
土地改良区では、農地への賦課金で組合の管理運営を行っています。
土地改良区法第42条2項では、農地転用などで農地を農地以外にする場合には、他の組合員との公平性をはかるための決済金として、その土地の負担相当分を精算する必要があります。
c. 行政書士・土地家屋調査士費用
多くの場合、農地転用の申請書類作成は行政書士、地目変更の伴う場合は土地家屋調査士に依頼します。依頼先によって報酬費が異なるので、事前に見積書の提出をお願いしておくとよいでしょう。
②農地転用後にかかる費用(工事・引き込み・登記・税金)
a. 宅地造成工事費用
農地を宅地にするには、申請・許可後の造成工事が必要です。
農地の伐採・伐根や整地、地盤改良、土盛、土留めなどの費用がかかります。
b. 水道引き込み費用
新しく上下水道を引き込む場合には、約40~60万円を相場に考えておく必要があります。
c. 登記費用
農地転用工事が完了すれば、法務局への登記申請が必要です。
土地家屋調査士に依頼する場合は、約4万円の申請代行費用がかかるため、自己申請による数百円の印紙代で申請する方のいます。
d. 税金
農地転用後の翌年からは、固定資産税や都市計画税、償却資産税などの支払いが必要になります。
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5.まとめ~土地の取得や家づくりの相談は早めに行うのがおすすめ
農地転用は、地域や申請者によって手続きの内容や期間が異なり、宅地への転用が認められない場合もあります。
そのため、申請を行う場合には事前に、農業委員会や行政書士、私たち建築士などに相談しておくことがおすすめです。申請内容はもちろん、必要書類や注意事項など、手続きを円滑に進めるためのアドバイスを受けておくとよいでしょう。
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