高気密・高断熱住宅の省エネ効果と快適性

高気密高断熱住宅は、密閉性が高く、高性能の断熱材により外気温の影響を受けにくい住宅のことです。
高気密高断熱住宅であれば、冷暖房の効率化・遮音性の向上・住宅全体の室温均一化がかない、省エネと快適性が望めます。

高気密高断熱の省エネ効果

>出典:省エネ住宅|省エネポータルサイト

高気密高断熱住宅は、魔法瓶のような構造と考えるとイメージしやすいでしょう。断熱性能が高いと、外気温に左右されにくくなり「夏は涼しく、冬は暖かい」環境に。一方で気密性能が高いと、外からの寒気や熱気を防ぎ、室内の暖気・冷気が室外へ逃げることを減らせます。

高気密・高断熱はどちらも欠かせない構造であり、この2つの相乗効果によって冷暖房を効率よく行えます。その結果、省エネ効果の向上、ひいては光熱費のコスト削減にもつながるのです。では、実際にどのくらいの省エネ効果が期待できるのでしょうか?

HEAT20(20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会)が提案する住宅外皮水準G1〜G3と、平成28年の省エネ基準を比較した「暖房の省エネ効果」から具体的な数値をチェックしてみましょう。


最も高い性能を誇るG3は、55〜80%の削減に成功しており、高気密高断熱住宅における省エネ効果が検証されています。なお、HEAT20の指針は、2022年の省エネ基準の改正に合わせて、それまで等級4(平成28年省エネ基準)が最高等級だったのに対してZEH水準の等級5、G2レベルの等級6やG3レベルの等級7が新設され、2025年には省エネ基準適合の義務付けが予定されています。

高気密高断熱住宅の快適性


高気密高断熱住宅の特徴が生活の快適性にどのように影響するのか、具体的に見ていきましょう。

住宅全体の室温を一定に保ちやすい

住宅における高気密なつくりは外からの空気の流入を抑え、高断熱は熱や冷気の伝わりを軽減します。そのため、住宅全体の温度差を均一に保てるようになり、一室だけが寒い・暑いといった現象が起こりにくくなります。さらに、空間の温度差によって起こるヒートショックのリスクを軽減できるでしょう。吹き抜けのある家は冬寒いといわれるのは、暖房しても2階に暖気が上がり隙間から外気が侵入してコールドドラフト現象によって足元が冷えるため。住宅全体の室温が一定ことは、吹き抜けや広いリビングなどをつくるりやすくなり、快適で自由な空間をつくることができるようになります。

体が感じる「快適な温度」を住宅全体で維持することにより、健康面でも大きなプラス作用をもたらします。

結露の発生を抑えられる


結露は、暖かい空気が冷たいものに触れることで発生します。住宅のなかでも“窓”は外気からの影響を受けやすく、結露が最も発生しやすい場所です。一般的な窓では、冬の暖かい部屋から流出する熱の割合は58%、夏の涼しい部屋に流入する熱の割合は73%とされています。しかし、高気密に欠かせない「複層ガラス」を採用することや樹脂サッシなどを導入することで窓の表面温度が下がりにくくなり、結露の発生を抑制できます。ただし、空間の湿度が上がると結露の発生が早まるため、適切な換気や24時間換気システムの導入が重要です。

 

小型エアコンでも夏は涼しい、冬は暖かい環境で過ごせる

高断熱高気密住宅は、外気温の影響を受けにくくなるため冷暖房の効率化が図れます。室内を涼しくしようと大型エアコンを使用すれば、それだけエネルギーコストがかかりますが高気密高断熱住宅は、小型エアコンでも十分な冷暖房効果が得られるのです。

冷暖房費を抑えられ、省エネ性能を高めた住宅は環境にも優しく、家庭のお財布にも優しい住宅といえるでしょう。さらに、生活の快適性もワンランクアップします。

高気密高断熱住宅を実現するには


高気密高断熱住宅の特徴が生活の快適性にどのように影響するのか、具体的に見ていきましょう。

高気密高断熱住宅を実現するには、以下の2つを取り入れましょう。

1.高性能な断熱材の使用とC値を目安以下に
2.複層ガラスの使用

UA値とC値を目安以下に

まず、断熱性能においては十分な厚みの断熱材を使用し、断熱等級(1〜7の等級で住宅への断熱性能を表したもの)を上げることが大切です。

外皮(壁や屋根などを含めた、家を覆う資材のこと)から外部にどのくらい熱が逃げやすいか数値化したものをUA値(外皮平均熱貫率)と表し、このUA値が小さいほど断熱性能が高いといえます。

HEAT20の「住宅シナリオ」を満たすには、代表都市で定められたUA値以下が目安となります。代表都市のひとつ、東京を例にとったUA値の目標値は下表をご覧ください。

東京で高気密高断熱住宅を建てる場合、この表を参考にして、目指す断熱性能の水準に応じたUA値を満たす設計が重要です。

また気密性においては、C値に着目しましょう。気密性を表す指標「相当隙間面積(C値)」は、住宅の隙間の大きさを表す数値で、値が小さいほど気密性が高いことを指します。一般的に高気密住宅といわれるC値の目安は1.0 cm2/m2以下。C値1.0cm2/m2は、はがき0.9枚分に相当します。

新築時に気密性をできるだけ高めておくことで、将来的に広がる隙間を最小限に抑えることが可能です。

複層ガラス、断熱サッシの使用

断熱性上げるには、外部に面している場所で最も影響を受けやすい窓や玄関ドアの対策が必要です。ペアガラスやトリプルガラスといった複層ガラスと樹脂や木など熱移動の少ないサッシの設置により、特に外気温の影響を減らしましょう。ガラスの間の空気層には、アルゴンガスやクリプトンガスといった断熱性を高めるガスを注入し、ガラスの表面に特殊な金属膜をコーティングして太陽熱の透過を抑制する「Low-Eガラス」を採用することで、より断熱性能を高められます。

まとめ


高気密高断熱住宅は外気の影響を受けにくく、冷暖房の効率が高いため、省エネと快適な暮らしを実現します。高性能な断熱材・適切な気密性・複層ガラスの採用や、さらに施工会社選びも重要です。

初期費用は高めですが、光熱費の削減と快適性の向上というメリットがあり、長い目で見れば、環境にも家計にも優しい住宅といえます。高気密高断熱住宅で、健康で快適な暮らしを始めてみてはいかがでしょうか。

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監修者情報

吉田基生

吉田基生二級建築士 宅地建物取引士 測量士捕

卒業後に某ハウスメーカーに入社。住宅営業、住宅FC部門のOFCを経験する。1999年に地元の不二建設に入社。営業、設計担当としてお客様の家づくりに携わる一方、企画住宅の開発やホームページの管理運営、宣伝広告などの業務を行う企画開発部の部門をつとめる。