補助金交付も視野に│GX志向型住宅について解説
2025年度の新築、リフォーム向けの補助事業「子育てグリーン住宅支援事業」が環境省、国交省より発表されました。
今回注目されたのは、従来のZEH水準住宅や長期優良住宅に対する補助事業とあわせて、新たにGX志向型住宅のが追加されたことです。GX志向型住宅は、ZEH水準の住宅よりさらに省エネ性能を高めことが要件になりますが、新たな住宅の省エネ基準の指針なるため今後注目されていくことが予想されます。そこで今回は、GX志向型住宅とその検証について解説していきます。
GX志向型住宅とは?
GXとは、Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)の略で、温室効果ガスの排出削減と経済成長の両立に向けた社会変革の取組をいいます。
つまりGX志向型住宅※とは、国のGX政策に沿って提唱されたZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)や長期優良住宅を超える性能を有した住宅を指します。具体的には「外皮(断熱)性能」「一次エネルギー消費削減」「再生可能エネルギー(太陽光発電等)によるエネルギー消費の相殺」の項目のうち、外皮性能を等級6以上、一次エネルギー消費削減性能が35%以上の削減など、より高い性能を求めています。国は「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現を目指す」としており、ZEH水準以上のGX志向型住宅の普及を図ることで、目標達成に近づけたいと考えています。
ZEHの適用要件
・強化外皮基準以上(断熱等級5以上)
・基準一次エネルギー消費量を20%以上削減(省エネルギー等級6相当)
・再生可能エネルギーの導入
・再生可能エネルギーの導入による一次エネルギー消費量から100%以上削減
GX志向型住宅の適用要件
・断熱等級6以上
・基準一次エネルギー消費量を35%以上削減
・再生可能エネルギーの導入
・再生可能エネルギーの導入による一次エネルギー消費量から100%以上削減
・HEMS※(ヘムズ。ホームエネルギーマネジメントシステムの略)の導入
※2025.2.7子育てグリーン住宅支援事業公式ホームページのGX志向型住宅の要件に追記(現在は検討案)
GX志向型住宅のメリット・デメリット

メリット①:光熱費の削減と快適な住環境
GX志向型住宅のメリットは何といっても光熱費の削減と快適な住環境の両方を手に入れることが出来ます。電気やガスなどのエネルギー資源が高騰している現在、快適な暮らしを支えるには少ないエネルギーで快適な住環境を実現する高性能住宅が不可欠です。高性能住宅は家中の温度差が少なくなることでヒートショックを減らし、結露によるダニカビ等の空気汚染が改善されるなど住む人の健康にも配慮した住宅です。
メリット②:資産価値の向上
2025年4月より、これまで任意だった断熱等級4が義務化になりました。そして2030年にはZEHや長期優良住宅で求められる断熱等級5が義務化する予定です。つまりこれまでの断熱性能の低い住宅は資産価値の下落につながります。一方で現在の任意の断熱等級6以上を求めるGX志向型住宅は、住宅の資産価値を高める要因にもつながります。
メリット③:脱炭素社会への貢献
GXが脱炭素社会に向けて再生可能なクリーンエネルギーに転換していく取り組みなら、GX志向型住宅はそのまま脱炭素社会に貢献する住宅といっても差し支えないでしょう。産業界と比べてCO2削減が進んでいない家庭部門のCO2削減にもGX志向型住宅は大きく貢献します。
デメリット①:建物価格の上昇
GX志向型住宅は断熱性能、省エネ性能の更なる向上に加えて太陽光発電の設置が義務になります。その分建物価格は上昇するため、当初からGX水準の家づくりや太陽光発電を考えていない方にとっては仮に補助金が増額されても、当初計画していた予算よりも増えてしまう可能性があります。
デメリット②:太陽光発電の導入
一部地域を除いて、断熱性能と省エネ性能以外に基準一次エネルギー消費を実質ゼロにする容量の太陽光発電を導入する必要があります。このため、敷地環境や日照条件により、十分な屋根面積の確保が難しいためGX志向型住宅に該当しないケースが予想されます。屋根が複雑にならず、シンプルなプラン計画を心がけることも重要になってきます。
デメリット③:設備のメンテナンス費用
GX志向型住宅で求める基準一次エネルギー消費35%以上に削減を実現するため、省エネルギー性能の高い住宅設備の導入が必要になってきます。これらの設備はデメリット①の導入コストの高さだけでなく、設備の故障や交換に伴って発生するメンテナンスコストも廉価な設備と比較すると高額になると予想できます。性能とコストの両方を比較しながらコスパの良い設備の導入を検討する必要があります。
ここでは、考えうるメリット・デメリットを紹介しましたが、現在だけでなく将来を見据えた家づくりを考慮しながら自分たちにとって何が良いがを考えていただく一助になれば幸いです
適用要件に記載されている用語の解説
断熱等級(断熱等性能等級)
断熱等級とは、品確法に規定された住宅の省エネルギー性能を表す等級のことを示したものであり、正式には断熱等性能等級といいます。南北に長い日本の国土を南北に1から8の区分に分けて、地域ごとに断熱性能を示すUA値やηA値の基準を設けています。
▼下記の表は横スクロールで確認できます。
断熱基準(UA値(W/㎡・K))と省エネ地域区分※
1地域 | 2地域 | 3地域 | 4地域 | 5地域 | 6地域 | 7地域 | |
断熱等性能等級7 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.23 | 0.26 | 0.26 | 0.26 |
断熱等性能等級6(GX水準) | 0,28 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.46 | 0.46 | 0.46 |
断熱等性能等級5(ZEH水準) | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.6 | 0.6 | 0.6 |
断熱等性能等級4(2025年義務化) | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 |
ZEH+(更なる外皮強化基準) | 0.3 | 0.3 | 0.4 | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 0.5 |
※茨城県内は一部を除き5.6地域になります。なお、8地域の断熱等級にUA値の基準がないため上記表は不記載にしています。
UA値は外部に面した建築資材(構造材や断熱材など)が持つ熱還流率(U値)の平均値を表しています。このため同じ建材を使用しても間取りや外観デザインにより平均の数値が変わるため、目標数値の設定においては断熱性能に余裕をもって部材選定をしておくことをおススメします。
不二建設コラム:【Q値とUa値】快適な家への第一歩│メリット・デメリットも解説
一次エネルギー消費量の基準値(BEI)
BEI(Building Energy Index)は、住宅のエネルギー消費効率を評価する指標です。基準になる一次エネルギー消費量に対して、計画している建物の一次エネルギー消費量と比べて削減効果があるかを判定するため数値は小さくなるほどエネルギー消費の削減効果があることになります。計算式は以下になります。
BEI=設計一次エネルギー消費量/基準一次エネルギー消費量
BEIが1.0以下の建築物は国が指標にしている省エネ性能を満たしているといえますが、ZEH水準のBEIは0.8(20%以上の削減効率)、GX志向型住宅では0.65(35%以上の削減効率)を求めているため、より大きく消費エネルギーの削減を求めていることが分かります。
なお一次エネルギーとは、石油や石炭、天然ガスなど自然から直接とりだせるエネルギーのことで、風力、潮力、地熱、太陽光発電などの再生可能エネルギーもこれに含まれます。これに対して、電気や石油製品(軽油や重油など)やLPガスなど一次エネルギーを加工や転換してつくられるエネルギーを二次エネルギーといいます。二次エネルギーはそれぞれのエネルギー単位が異なるため、一次エネルギーの値に換算してエネルギ―消費量の評価を行います。
旭ファイバーグラス:一次エネルギー消費量の基準 「BEI」 とは
再生可能エネルギー
再生可能エネルギーとは、石油天然ガスといった有限の化石エネルギーとは違い、太陽光や風力、地熱といった自然界に存在してかつ枯渇しないエネルギーから作り出したエネルギーを指しています。さらにエネルギーを作り出すときにCO2を排出させないことも再生可能エネルギーの定義にあたります。家庭で消費した化石燃料をふくむエネルギー消費分を、太陽光発電で生み出した再生可能エネルギーで相殺することがZEHやGX志向型住宅において必須となっています。
茨城(5地域、6地域)でGX志向型住宅を建てる
外皮性能を考察する
茨城県は、地域区分のほとんどが5,地域6のため断熱等級6で求められるUA値は0.46W/㎡・K以下です。なお一般的に採用されているグラスウールやロックウールのU値は0.038W/m・Kのため、通常の充填断熱にプラスαで断熱材の厚みを増やすか、より性能の高い断熱材を採用するなどを検討しなければ等級6相当まで引き上げるのは難しいでしょう。
上記のことをふまえて、今回は当社で建築した街かどモデルハウス【2階建約34坪、建築地:茨城県守谷市(6地域)】の外皮性能をもとに検証をおこないました。
①街かどモデルハウス基本外皮データ
上記の外皮計算から、街かどモデルハウスのUA値は0.55と断熱等級5相当の建物になります。なおこのモデルハウスの概要はツーバイフォー工法を採用しています。床にはネオマフォーム、壁・天井には高性能グラスウール、窓サッシはオール樹脂ペアガラスを採用。上記モデルハウスの断熱等級6にするためには、UA値を0.09以上数値を下げる必要があります。
②ツーバイシックス(2×6)工法に変更して断熱材の厚みを増した場合のUA値
壁の厚みが89㎜のツーバイフォーから、140mmのツーバイシックスに変更して壁断熱の厚みを変更してみたところ、等級6相当の0.46まで一気に引きあがりました。天井や床、窓サッシなどの性能を引き上げることで、さらに外皮性能を引き上げることも可能になります。
③断熱材やサッシの性能を引き上げて等級6相当にしたUA値
こちらの計算結果は、壁のツーバイフォー材の変更はせず断熱材や窓サッシ等の性能強化を図って導き出した数値です。建物の間取りや形状によってもUA値は変わってくるため一概に同様の対策がとれるわけではありませんが、様々な対策を講じることにより等級6相当を狙うことも可能であることを確認することができました。
一次エネルギー削減を考察する
一次エネルギー消費を35%以上の削減まで引き上げるためには、断熱性能を引き上げるだけは到達することはできません。性能を引き上げたうえで、冷暖暖房、給湯器、換気設備、照明器具などの住宅設備の省エネ性能の強化が不可欠になります。特に暖房・給湯・換気は、エネルギー消費量の削減性能値を大きく変わるためノウハウをもつ工務店とよく相談することが重要です。下記では一次エネルギー削減計算例を紹介いたします。
▼
換気設備を変更した事例です。もともとの削減率がBEIを0.73(27%削減)に対して0.58(42%削減)まで引き上げることが出来ました。BEIの性能値を引き上げるには計画プランはもちろん大事ですが、高効率の住宅設備を選択することによりエネルギー消費の削減率をこのように変えることが重要になってきます。なお、計算の根拠になる建築研究所が公開している「エネルギー消費性能計算プログラム」は令和7年4月に改訂なるため、数値に違いが生じる場合があります。
建築研究所:住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム
基準一次エネルギーの削減率を35%以上はこれで達成したため、残る太陽光発電等の再エネ設備の導入による消費エネルギーの相殺およびHEMS※(ホーム エネルギー マネジメント システム)の搭載により、現在求められているGX志向型住宅の条件をクリアしたことになります。
※2025.2.7子育てグリーン住宅支援事業公式ホームページのGX志向型住宅の要件に追記
子育てグリーン住宅支援事業を活用する
GX志向型住宅の補助制度は、2025年に環境省と国交省が連携して始まる「子育てグリーン住宅支援事業」が窓口になり、新築住宅の補助要件は上記のに通りになります。なお24年11月22日以降に基礎工事より後の工程に着手した新築工事から補助対象となります。
新築要件 | 補助額 | 対象世帯 |
---|---|---|
GX志向型住宅 | 160万円 | 全世帯 |
長期優良住宅 | 80万円(解体を含む場合は100万円) | 子育て世帯等 |
ZEH水準住宅 | 40万円(解体を含む場合は60万円) |
GX志向型住宅は「子育てグリーン住宅支援事業」の補助金は160万円を予定しています。ZEH水準の住宅や長期優良住宅の補助額より多い上、全ての世帯を対象にしてることから採用しやすい補助事業といえます。しかし、対象住宅には一定の制約があるため注意が必要です。
補助事業の対象外となる住宅
①床面積が50㎡未満240㎡超の住宅
②「土砂災害特別警戒区域」に立地する住宅
③ 「災害危険区域」に立地する住宅
④「立地適正化計画区域内の居住誘導区域外」かつ「災害レッドゾーン内」で建設されたもののうち、3戸以上の開発又は1戸若しくは2戸で規模1000㎡超の開発によるもので、市町村長の勧告に従わなかった旨の公表に係る住宅
⑤「市街化調整区域」かつ「土砂災害警戒区域又は浸水想定区域に該当する区域に立地する住宅
また、日照が少ない地域や都心部などの狭小地の場合には一部緩和規定があります。詳細は環境省の「子育てグリーン住宅支援事業」を参照ください。なお、蓄電池を導入する場合、補助額にプラスして導入費用の1/3が補助されます。
まとめ
2025年度に補助金交付が予定されているGX志向型住宅について解説いたしました。補助金のことがクローズアップされがちですが、GX志向型住宅はあくまで低炭素社会の実現と快適で経済的な暮らしを日本の住環境の向上に一役を担う基準です。コストはZEH水準の住宅より高価になりますが子育てグリーン住宅支援事業を使ってぜひ採用したい性能です。なお、断熱の計算と一次エネルギー削減の計算という2つのハードルがあるため、GX志向型住宅を実現には、高断熱住宅の実績やノウハウのある工務店や設計事務所にご相談することをおすすめします。
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